
今晩はリリースされたばかりのジェームズ・エーネス(ヴァイオリン)とフアンナ・メナ指揮BBCフィルハーモニックの演奏を聴きます。
このアルバムはサラサーテに影響を受けたスペイン風味のヴァイオリン協奏曲を集めています。
ラロのスペイン交響曲、交響曲とは言ってもちょっと特殊な構造の協奏曲。ラロはフランスの作曲家だけど、この曲によってスペインの作曲家と思われがち。珍しくパリ音楽院に学んでいない方。サラサーテはラロの親しい友人だったそうで、この曲もサラサーテが初演していますね。さて、エーネスの演奏はどちらかというとあまりハメを外さず真面目に演奏しているという印象。スペイン的な奔放的なところは少なく、どちらかというと音楽をあるがままに形にしていく、という演奏でしょうか。ちょっと物足りない感じもしますが、聴き進むうちにこの曲のスペインっぽさだけではない線が聞こえてきます。理知的なスペイン交響曲。指揮のメナはスペイン系でこういうのが得意な様子。録音もすごく良くて、たっぷりした低音、美しく広がる弦、ガツンとくる打楽器、そしてよく通る木管、ちょっとピックアップ気味ですが、美しい。
サン=サーンスの協奏曲第3番も、あまり大きな表情は見せないけれど、確実に攻めています。第1楽章なんかももう少し思わせぶりな弾き方もできると思うけれど、ストレートに行きますね。古典派みたいにテンポが揺れない。でもそれがこの曲に非常にあっているように思います。襟を正したくなる演奏。2楽章のアンダンティーノ・クワジ・アレグレット、これは美しいですね、自然な呼吸感で感傷的になりすぎず、落ち着いた雰囲気でよく歌います。終楽章はオケの存在感が結構大きい。この録音はヴァイオリンソリストが実際の演奏と同じようなバランスで録音されていて、巨大なヴァイオリンではなくて、オーケストラの前に立つ一人のヴァイオリンの大きさがそのまま撮られていますね。総じて非常にバランスのいい演奏。ただもっと遊んでもいいかな?作品を聞かせるという意味では正解な演奏。この曲はどちらかというと古典的な形式の曲だと思いますが、エーネスの演奏は構造的なバランスを取った演奏でこの曲には相応しいかも。
最後のサラサーテのカルメン幻想曲はショーピースですが、メナの指揮の出だしがいいですね、しっかりとしたリズムで存在感のあと、エーネスのヴァイオリンはとても上手いけど、この曲ならもっと遊んでもいいかも?真面目な性格かな?インテンポで正攻法。でも考えたらこういう超絶技巧を崩さず弾くというのはものすごい技量だと思います。派手さはないけれど、確実に決めてくる。ハバネラのヴァリエーションは速め。これもこのテンポで揺らさず弾くのは大したもの。続くトゥララもちょっと軽快だけど音色の変化は素晴らしい。セギディーリャあたりで乗って来たかな?少し前のめりのテンポの上で超絶技巧が素晴らしい。終曲はノリノリですね、これも絶対にテンポは崩さない、揺らさない、誤魔化さない。ストレートです。これがこの曲だと気落ちがいい。最後はどんどん速くなるのにいっさい乱れがないのは大したもんです。
全体に何度も書くけれどバランスのいい演奏。これらの作品をあるがままに表現していて繰り返し聴きたくなるアルバムです。