
今晩はジェームズ・エーネスのヴァイオリンと指揮、カナディアン・ナショナル・アーツ管弦楽団によるバッハのヴァイオリン協奏曲全集を聴きます。
エーネスは言うまでもないカナダ出身で世界で活躍するヴァイオリニスト。ついこの前もラロやサン・サーンスのコンチェルトを聴いたばかりです。ディスコグラフィをみるとかなりのリリースがありますが、意外なことにバッハは無伴奏ソナタとパルティータの1枚のみ。ライナーによると、エーネスはバッハのコンチェルト集を録音を夢見たけど目標を共有し、共通のヴィジョンをもち、率直に意見を交わせるパートナーが必要だったとのこと。カナディアン・ナショナル・アーツ管弦楽団は彼がアーティスト・インレジデンスとして3シーズン共演していて、絶好の機会ということでアルバムに臨んだようです。
早速聴きますが、パッと聴いてなんていい録音なんでしょう!ホ長調のコンチェルトはとにかくオーケストラが美しい。残響がたっぷり取り入れたれつつも弦合奏は実にクリア。低音は全体を響きで包みこみす。ソロはオンマイクで音像は大きめ。音色は非常に艶やか。暖かさがあるけれど決して柔らかすぎず、よく通る音です。
そして、聴いた瞬間、懐かしい気持ちになった・・・のは、これ、古楽器の演奏じゃないんですよね。今バッハの録音と言ったらほとんどがHIP、古楽器、みたいな感じがなきにしもあらず。モダン楽器でやってっもすごく古楽器を意識した演奏で、ヴァイオリンはノンヴィブラート、歌いかたもどことなくフレーズが膨らむ独特感混じっていたり・・・いや、それはそれで好きなんですが、今新しいバッハが出てもなんとなく新鮮味がなくなっていましたが、この録音はモダン楽器そのままの奏法で弾いているんじゃないかしら。古楽器が流行る前、私が最初にバッハのヴァイオリン協奏曲を聴いていたのはこういう感じの演奏が普通。だからこそ今聴いて懐かしさと、逆に新鮮さを感じています。エーネスのヴァイオリンは基本的には知的でありながらも緩徐楽章は美しい程よいヴィヴラートをかけての演奏です。テンポも中庸で極端な部分はないのですが、先ほど書いたように、弦合奏とヴァイオリンソロ、そして控えめながら誠実なチェンバロが実にいいバランスでそれだけで聴かせてしまう。音楽、特にクラシック音楽はあんまり余計なことをやるよりも、あるがままに演奏する方が好きなので、最新の録音と美しい演奏で聴けるだけで幸せかも。
2曲目のフルートとヴァイオリン、チェンバロのコンチェルト、まずはリュック・ボージェジュールのチェンバロがいい。ついこの間彼のバッハのソロアルバムを聴いたばかりですが、派手なパフォーマンスではなく誠実にそのままの姿を弾いていくタイプ。このコンチェルトも端正で恣意的なことはせずに作品の美しさそのままを弾いていってくれます。それからフルートのジョアンナ・グフロレールはこのオケの首席だそうですが、これは本当に澄んだ美しすぎるフルートの音をまっすぐほぼノンヴィブラートで演奏しますが、これは決してトラヴェルソの真似事ではなく、そういうイミテーションではないフルート本来のまっすぐな、ただただ美しい音と均一な音と高貴ささえ感じるピンと張った音で素晴らしい。本来フルートがヴィヴラートをかけるようになったのは20世紀に入ってからのマルセル・モイーズからですから、余計なものはかけないの本来の姿。
オーボエとヴァイオリンの協奏曲も同様ですが、こちらはオーボエのチャールズ・ハマンは上品でコントロールの効いた音色でエーネスとのバランスもよく、作品そのもののがもつ美しさが届いてきます。とkに第2楽章の掛け合いが印象的でした。
バッハの協奏曲集はよく言われている通りイタリアの明快な協奏曲がお手本になっていますから、どの曲聴いてもあまり余計なことを考えずにすんなりと耳に入ってくるのがいいですね。古楽系によくある過激なアタックとか異様な速さとかそういうこともなく、安心感。こういうのって案外大事じゃないでしょうか。
2本のヴァイオリンの協奏曲では川崎洋介さんとのソロ。この方はこのナショナル・アーツ・センター管弦楽団のコンサートマスターをされておられるのですね。エーネスとのアンサンブルは非常に緊密でアーティキュレーションなどは室内楽並みに綿密丁寧な仕上がり。緩徐楽章は二人の音色の違いが楽しめます。少し暗めの音色が川崎さん、明るく明快なのがエーネスでしょう。定位は中心がエーネス、左に川崎さんの配置。前に出ているのがはっきりわかる録音。
その後のヴァイオリン協奏曲ト短調はチェンバロ協奏曲を再構成したもの。オリジナルはこの編成のものを鍵盤楽器用にアレンジし他のでしょう。この前のラナの演奏と比較すると面白いですね。特に2楽章の有名なメロディの歌が素敵。よく歌います。最近のバッハ演奏ではこういうのは少ないんじゃないかな。
最後はこのオケのt副コンサートマスターのジェシカ・リネバックを交えての3つのヴァイオリンのための協奏曲、これも同様同じオケ。明るく生き生きした演奏、ソロは3本が渾然一体となっていて、残響の美しさと相まって締めくくりに相応しい演奏。
いいバッハを聴きました。