クラシックとオーディオの日々

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トリオ・カレニーヌのリムスキー=コルサコフとチャイコフスキーのピアノ三重奏曲

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今晩は、ミラーレから11月21日にリリースされた、トリオ・カレニーヌの演奏によるリムスキー=コルサコフチャイコフスキーピアノ三重奏曲を聴きます。
収録曲は以下の通り。

 

ニコライ・リムスキー=コルサコフ(1844–1908)
ピアノ三重奏曲 イ短調
アダージョ


ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840–1893)
ピアノ三重奏曲 イ短調 作品50
悲歌風小品 – モデラート・アッサイ
主題と変奏 – アンダンテ・コン・モート
第1変奏 – 同じテンポ
第2変奏 – さらに動きをつけて(ピウ・モッソ)
第3変奏 – アレグロモデラー
第4変奏 – 同じテンポ
第5変奏 – 同じテンポ
第6変奏 – ワルツのテンポで
第7変奏 – アレグロモデラー
第8変奏 – フーガ:アレグロモデラー
第9変奏 – アンダンテ:マズルカ風に(マ・ノン・タント) 
第10変奏 – マズルカのテンポで
第11変奏 – モデラー
最終変奏とコーダ – アレグロ・リソルート・エ・コン・フォーコ


ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー/ジャン=クロード・ペヌティエ編曲
アンダンテ・アパッショナート(ピアノ、ヴァイオリン、チェロ版)(ピアノ協奏曲第2番 ト長調 作品44 の編曲)


トリオ・カレニーヌ
パロマ・クイデル(ピアノ)
ジュリアン・ディウドガール(ヴァイオリン)
ルイ・ロッド(チェロ)

 


ピアノ・トリオ、これだけ見ると知らない人は3台のピアノの曲かしら、と思うかもしれないし、なぜピアノ三重奏曲というのがピアノとヴァイオリンとチェロなのか、フルートとオーボエとピアノではなぜピアノトリオと言わないのかとか、色々突っ込みたくなりますが、和声と旋律とバスのバランスが良いということで最も多くの作品があるからでしょうね。でもよく考えたらジャズのピアノ・トリオといえば当然ピアノとベースとドラムだから、ジャンルによって同じ編成の名称の中身が違うというのも面白い。


と雑談になってしまいましたが、私はピアノ・トリオという編成、クラシックもジャズ好きです。ピアノの華麗な響きの上に美しいメロディを奏でるヴァイオリン、そしていつもは遠慮がちでいながら自分の出番となると突如雄弁雄大な音楽を奏でるチェロ。そしてそれらのアンサンブルが一体となった時の不思議な高揚感。これはジャズでも同じ。
今までこちらでは以下のようなアルバムを取り上げてきました。

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今晩は、好きな編成だからと何の前情報もなく聴いてみたこのアルバムですが、最初に収められている曲を聴いてものすごく惹きつけられました。作曲者も見ないまま聴いて、この冒頭の不思議な和声感覚は誰?フランス系でもドイツ系でもない・・と思って聴いていたらリムスキー・コルサコフピアノ三重奏曲イ短調。これは初めて聴きましたが、冒頭、ピアノの和声が半音ずつ下降していき時に旋法の響きがまじりあった独特なハーモニーからはじまり、チェロのロマンティックなソロが大変魅力的な作品。管弦楽曲が得意なリムスキーにとって意外に室内楽は苦手分野とのことで、この作品も未完ですが、その和声とチェロの高音などの楽器使用法で鮮やかな色彩感が感じられる夢見るような美しい作品。これは全曲聴いてみたい。


ここで演奏しているトリオ・カレニーヌ。あまり聴いたことありませんが、ミラーレから何枚かのアルバムを出しています。2009年にパリで結成されたフランスのピアノ三重奏団で、トルストイの小説『アンナ・カレーニナ』にちなんで名付けられました。結成当初からパリ地方音楽院でイザイ四重奏団に学び、メナヘム・プレスラーやアルフレッド・ブレンデルら一流音楽家の指導を受けながら独自のスタイルを確立後、ミュンヘンARD国際音楽コンクールでの優勝を契機に国際的な注目を集めて以来キャリアを築いていいます。


トルストイにちなんだ名前からロシアものの録音が多いのかと思いきや、シューマンやタイユフェール、リスト、シェーンベルクドヴォルザークら東欧作品のアルバムが各誌で賞賛され、近年は新メンバーを迎え、現代音楽作品の初演や委嘱にも積極的に取り組んでいるとのこと。アルバムではロシアものは初めてかな。ナクソスから出ている「ロシアのピアノ三重奏の歴史」シリーズの演奏者がブラームス・トリオ、というのと逆ですね。
しかしこのトリオ・カレニーヌ、リムスキー・コルサコフの演奏では音色、アンサンブル、バランス、各ソロとも充実した素晴らしい演奏でした。


続くチャイコフスキーピアノ三重奏曲 イ短調 作品50「偉大な芸術家の思い出に」。リムスキー・コルサコフと同じイ短調ということで(実際は第3楽章はイ長調ですが)調性的に統一した構成。この作品はピアノ三重奏の歴史の中でもひときわ重要で、若くして亡くなったニコライ・ルビンシテイン(1835–1881)を追悼するために作られ、以後ロシアのピアノ三重奏は追悼の意味が込められるようになりましたね。
チャイコフスキー室内楽についてはこちらでも取り上げました。こちらも追悼の作品。

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第1楽章「悲歌風小品(Pezzo elegiaco)」では、冒頭から深い嘆きに満ちています。チェロが静かに主題を歌い出し、ヴァイオリンとピアノがこれに寄り添うように広がっていきます。形式としてはソナタ形式に似ていますが、感情の流れが優先される感じで、自由に展開されます。悲しみ、怒り、回想が交錯しながら、徐々に巨大なクライマックスへ向かい、最後は力尽きるように静まっていきます。師であり友であったニコライ・ルビンシテインへの深い哀悼が込められた、きわめて個人的な楽章。
ここまで聴いて、このトリオ、それぞれのソロの自己主張がかなり強い個性的なアンサンブル。予定調和的な演奏ではなくて、それぞれ三人がソリストのように弾ききっていながら、トリオ全体としてうまくまとめていくという感じ。録音もそれぞれの楽器を大きくピックアップしていて、音がくっきりしています。再生環境によってはちょっと硬いかも。


第2楽章「主題と変奏」は、素朴なロシア民謡風の主題に基づく大規模な変奏曲。まず弦楽器によるユニゾンで主題が提示され、その後11の変奏が続きます。変奏は一つひとつ性格が異なり、華やかなピアノ技巧の変奏、軽やかな舞曲風、深い祈りのような静かな変奏、対位法を用いたフーガ風など、非常に多彩です。主題がさまざまな表情に姿を変えながら、亡きルビンシテインの人柄やその活発な演奏活動を回想するかのように展開していきますね。
変奏を終えると、音楽は次第に緊張を帯び、フィナーレへと突入します。ここで第1楽章の「悲歌」の主題が戻り、荘厳な葬送行進曲として再び現れます。この“回帰”はきわめて印象的で、全曲が一つの人生を描く物語のように感じられます。最後は力尽きるように静かに終わり、深い余韻を残します。
演奏は先ほど書いたようにそれぞれかなり強く弾いていて、引き算のアンサンブルじゃなくて、足し算のアンサンブル。なんか訳わからないかもしれませんが、室内楽やってて、他のパートが主役なら自分は抑えよう、とかそんな気遣いってあって、それがやりすぎると面白くないのですが、それが引き算が多すぎるアンサンブルとすると、このトリオ・カレニーヌはそれぞれが引かないでぶつけてくる感じ。それが激しいドラマになっていて、この曲に合っていますね。


最後にチャイコフスキーピアノ協奏曲第2番の第2楽章をジャン=クロード・ペヌティエがアレンジしたもの。ペヌティエはご存知の方も多いと思いますが、フランスの名ピアニスト。ちょうど今来日中、つい先日トッパンホールで演奏会が行われましたね。聴いた人いるかしら。そしてこの演奏はペヌティエがチャイコフスキーピアノ協奏曲第2番》第2楽章をピアノ三重奏へと見事に置き換えた編曲。さすがピアニストだけあって原曲の三重奏曲協奏的な対話構造をそのまま活かしつつ、ピアノ・ヴァイオリン・チェロが対等に歌う親密な室内楽へと生まれ変わっています。


ところでチャイコフスキーピアノ協奏曲第2番って、第1番の陰に隠れてしまって、あまり演奏されませんよねぇ。え?あったの?っていう人もいるくらい。まぁ有名な方が1番だから必ずあるのですが、本当に演奏されませんよね。でもじっくり聞くと、私なんかは1番より好きなんですが・・・そして、こうやって室内楽になるとまたその良さが際立ちます。もしかしたらピアノ協奏曲じゃなくてこういった室内楽曲にした方が後世で聴かれたかもしれませんね。
協奏曲の壮大さではなく、ロシア的な抒情と語り合うような美しさが際立ち、あたかもチャイコフスキーがもう1曲三重奏を書いたかのような自然さを備えた名編曲・名演奏です。


ということで、トリオ・カレニーヌの「偉大な芸術家の思い出に」は素晴らしい演奏でしたが、私にとっては最初のリムスキー・コルサコフの美しすぎるピアノ三重奏曲とペヌティエの名アレンジによるピアノ協奏曲第2番のアレンジが大きな収穫でありました。

 

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