
先日少し書きましたが、今度オーディオルーム(件寝床)のリフォームを行います。壁紙を黒を基調にして、音楽に集中して、さらによく眠れるように(笑)、ドアは簡易防音、サッシは二重にして一応音漏れを減らします。
その時にいったんすべての家具類・本棚を整理しなければならないのですが、思い切って数百枚あったCDを処分しました。また同じく数百冊あった楽譜も売りに出しています。70に近づくといよいよ物欲も無くなってきて、いまはストリーミングでほぼすべての集めたCDは聴けるし(だいたい持っていてもそのCDを探すのに一晩かかりそう)パソコンに重要なものは取り込んだし、楽譜はクラシックはIMSLPでなんとかなるし、そこにないスコアは職場の図書館で借りれるし・・・ということで身軽になって心も軽くなった気分。大きな本棚も部屋から出して小さな部屋が少し広がりました。
LPについては以前かなりの枚数を持っていたのですが、これも15年くらい前にすべて処分。結構いいお値段で売れました。
ところが最近またLPブームですね。CDよりも生産量が多くなりつつあるなんて聴くとびっくり仰天ですが、そうなるとまたLPも聴いてみたいなんて気持ちになります。
LPは若い頃、本当に格闘したという感じで再生していました。なかなかいい音が出ない。ホコリ、ソリ、そして盤面摩耗、さらにはLPプレーヤーのセッティング、フォノイコライザー、MCかMMカートリッジか、ベルトドライブかダイレクトか・・・・選択肢も多いし当時はなにがいい、なにが悪いなんていう情報に振り回されていて、なんか音楽聴くのにいつも疲れていたような・・・。
しかしふとあの頃を思い出すと、確かにLPの音、というのはあって、復刻されたCDやストリーミングで同じものを聴いても、あのLP時代のほうが音が良かったかも、でもこれは過去を美化しているだけかも、などとウジウジします。LPとプレイヤーを買えばいいのですが、またあの格闘というトラウマとLPという物質が増えることへの抵抗があってなかなか踏み切れません。
以前なにかのブログで呼んだのですが、LPを再生してそれをデジタルで取り込むと、意外とLPプレーヤーで再生したのとそれほど変わらない音がすると言います。ということはそういうLPから取り込んだサブスクがあればそれでもいいのかも・・・・なんてそんなのあるのかな・・・。
ところがあったんです。QOBUZで音楽を探す方、またAMAZON MUSICでも探す方はご存知かと思いますが、クラシックだと赤い色にLPの画像が印刷してあるあれ。BnFというレーベル。これは決して怪しいものではなくて、フランス国立図書館(BnF = Bibliothèque nationale de France)が所蔵している歴史的音源をデジタル化して配信するシリーズです。1949~1962年頃にフランスで発売されたLPやSPを音源としています。かけるとプチプチした音やLP独特のバックグラウンドノイズも入っているので、テープなどではなくLPそのものを再生してデジタル化していると思います。しかもハイレゾ96kHzで。
以前はこれを見つけても古かろう悪かろうと思っていたのですが、LPの音、という観点から聴くと、これが意外といい。昔CDで復刻されたアルバムと比べて聴くと、明らかにBnFのLPからの取り込みのほうが音が厚く、あるものは柔らかく、あるものは意外に抜けた音で聴こえる。そしてこれははるか昔聴いたLPの音です。良くも悪くも。
多くあるリマスター盤というのはだいたいノイズを抑えたりLPだったらプチプチノイズを消したりしているものが多いかと思いますが、このBnF Collectionは図書館資料を公開するというのが目的なので、プチノイズ、LPらしい質感、当時の音 が意外と残っている。
公式には 約45,000枚のアルバムがでていて、Qobuzの説明では 10万曲以上 出ているとか・・・とんでもないですね。これはクラシックだけでなく、ジャズ、シャンソン、世界音楽、子ども向け、朗読まで含んでいますね。Qobuzの説明では1900〜1963年頃までのフランス国内流通音源を対象に、7つのコレクションに分かれているようです。ジャンルによってジャケットの色が違っていて、赤はクラシック専門。青はジャズ系。緑はワールドクラシック。紫はシャンソンやポピュラーとのこと。
以下が公式サイト。
これによると「2012年に開始されたこのプロジェクトでは、1949年から1962年までに納本されたすべてのLPレコードをデジタル化することが決められました。1949年はフランス国内で最初のLPが製造された年であり、1962年は、2012年当時の法律でレコードの著作隣接権保護期間が50年であったためです」とある。
そしてフランス国内で最初に製造されたLPは1949年のもので、ルイ・クープラン《リュリ礼賛》、レーベルはL'Oiseau-Lyre(オワゾー=リール)指揮はロジェ・デゾルミエールであったとのこと。この録音はなんとアンドレ・シャルランが録音技師でオーディオ録音の最初期の貴重なものですね。そして面白いのは、フランスではクープランのようなフランス的なものの録音をまずLPにしようという文化の香りが高いこと。
世界で最初に発売されたLPレコードは米国のコロンビアが発売したミルシティンのヴァイオリンとワルター指揮コロムビア交響楽団のメンデルスゾーンのコンチェルト。こちら、いかにも売れそうじゃないですか、巨匠と名ヴァイオリニストの名曲アルバム。ところがフランスときたらクープラン、デゾルミエールなんていかにも売れなさそう(笑)でもフランスの文化を守るぞ、みたいな意気込みも感じられますよね。
このLP《リュリ礼賛》をBnFで探したらありました!
早速聴いてみたら、これはちょっと盤のコンディションが悪すぎ・・・ほとんど質の悪いSPみたいな雑音の向こうに音が聴こえます。ただ、SPとは違って、そのノイズの先に非常にクオリティの高い音が聴こえてきます。もちろん古楽器ではないですが、ヴァイオリンの音色も素晴らしいし、なによりもフルート2本が素晴らしい。フレンチスクールの、ランパル系の音がします。洗練されて上品、これはこの当時のフランスの演奏者にしか出せない音。そしてアンドレ・シャルランの手腕もあったのではないかと思います。ノイズが多いのは古いということもあるかと思いますが、LPの技術(溝を細くする技術)もまだ発展段階だったのでしょうね。B面のトリオソナタのほうはもっと聴くに耐えない雑音が入って、ワウフラッターもおかしくて、さすがにギブアップしましたが・・・・。

さて話が逸れました。このLPはさすがに音が悪すぎですが、他のBnFシリーズのものはずっと音がよくて、時には確かにLPの音がするものもあります。例えばリパッティのリサイタルのアルバム。これは以前EMIの復刻CDを持っていたのですが、BnFはLPから直接録音しているようで、音が太く、まろやかで、オリジナルはこんな音だったのか、と聴き入ってしまいました。
これらのコレクションはLPが発売されるとすぐにフランス国立図書館に納品しなければならなかったので、もしかしたら納本制度によって発売直後の盤が保存されていた可能性が高く、LP初期プレスの音を今に伝えているのかもしれません。LPマニアの方はご存知の通り、初版のLPはとんでもない値段がつきますが、もしかしたらその音が聴けるのかも・・・。
この他片っ端から聴きました。サンソン・フランソワ、ウィルヘルム・ケンプ、カサドシュ、ハスキル。そして意外に多いのがジャン・ピエール・ランパル。ランパルは膨大な数の録音を行ったけれど、それほどたくさん復刻されてはいないので、これは貴重かも。ヴァイオリンだとグリュミオー、シュナイダーハン、メニューイン・・・・いやぁ贅沢な話ですね。
さてオーディオに話を向けますと、今使用しているのが真空管アンプ、1980年代のスピーカー、R-2Rラダー方式のdacでこれはどうも私の好みは最新デジタルというよりはLPの音を自然に欲しているようです。プレーヤーだけがHQPlayerで割合と先端的なものですが、このプレーヤーはいわゆるデジタルフィルターやアップサンプリングやら組み合わせは無限近くあるので、これをうまく使ってLPっぽい音にできるかも。今いいなと思っているのはPCMだとノイズが刺さってきたり音が鋭すぎるのでDSD11.2にして、さらにフィルターはpoly-sinc-gauss-longにしてみています。そうすると音が自然になり飛び出しすぎず、LPらしさが出てきているかも・・・。もう少し試行錯誤してみたいと思います。
ということで、なんだか宝の山(人によってはゴミの山かも?)を見つけてBnF沼にハマりそう・・・・また気に入ったものがありましたら1枚ずつ紹介したいと思います。
過去記事は以下のブログから