クラシックとオーディオの日々

毎日聴いている音楽の記録です。

バッハのオリジナル楽器によるフーガの技法

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今晩は、コレギウム・ムジクム`23によるバッハがライプツィヒで使用したと思われるオリジナル弦楽器によるフーガの技法を聴きます。
コレギウム・ムジクム`23は、バロック・ヴァイオリニストのナディア・ツヴィーナーとライプツィヒ・トーマス教会オルガニストヨハネス・ラングが共同で創設したバロック・アンサンブル。23は1723年にバッハがライプツィヒで活動を始めた年からとっています。活動はバッハが活動したトーマス教会で行われ、このアルバムで使われているホフマン製の楽器を定期的に使用しているとのこと。
演奏者は
ナディア・ツヴィーナー(ヴァイオリン1)
アンナ・ドミトリエワ(ヴァイオリン2)
マグダレーナ・シェンク=バーダー(ヴィオラ
ジョセフ・クラウチ(チェロ)
ヨハネス・ラング(オルガン)
ヘドヴィヒ・オーゼ(ヴァイオリン、トラック7〜9)
アンナ・ライザナー(チェロ、トラック7および17)
冒頭にはバッハがライプツィヒに赴任したときに作曲されたカンタータのコラール《神のなさることはすべてよし》(BWV 75/7)が演奏されます。ここで演奏されるオルガンはザカリアス・ヒルデブラント製オルガン(1723年/シュテルムタール村の教会)で、バッハ自身が試奏し、奉献式も行ったオルガン。2008年に修復され、当時の「不等分律調律」で演奏可能になっているとのこと。
このコラールはとても明るく活気に満ちていて、ライプツィヒに赴任したばかりのバッハが、希望に燃えていたのが感じられますね。それほど大きいオルガンではなさそうで、割合と地味系の音色。バッハはこういう感じの音色のオルガンを奏でていたと想像しながら聴くのも楽しいです。残響は小さい教会なのでしょう、短め。ブックレットの最後にオルガンの美しい写真があります。
その後の「フーガの技法」で使用されている楽器は、1729年製のヴァイオリン2挺とヴィオラ(Johann Christian Hoffmann製)で、ライプツィヒのトーマス教会の所蔵品、バッハが教会カントルだった時代のもの。それからチェロは18世紀中頃のドイツ製4弦チェロ(製作者不詳)で同じくトーマス教会の蔵品。さらに1742年製の5弦チェロ・ピッコロ(Andreas Hoyer製)現在は個人所有ですが、当時と同じタイプの楽器で録音のために借りたとのこと。
バッハがライプツィヒに赴任したときには、すでにホフマンが1722年に制作した8丁のヴァイオリンとヴィオラ・チェロがあったようですが、バッハはそれらに満足することなく、新たに導入された楽器のようです。バッハが試奏した可能性もあるかも。
これらの楽器は300年の間眠っていたわけではなく、修復されつつも演奏に使われてきた楽器とのこと。バッハ時代のオリジナルの音色とはその点少し違っているかもしれませんが、少なくともバッハ時代から連綿と引き継がれ演奏されてきた楽器です。
演奏はノン・ヴィブラート、ピッチはa=415Hzの古楽ピッチ。音色はイタリアの華やかで艶やかな音色とは少し異なり、渋く暗めの音に聴こえます。チェロもちょっと独特な地味系の音。ヴィオラも甘い音ではなくて、ちょっと苦虫を噛んだような重い音色。こういった音色をバッハは好み、聴いていたのでしょうか。
フーガの技法は、何度聞いても不思議な音楽ですね。対位法の技を極めたバッハがさらにその技に磨きをかけ、死の間際まで取り組んだ作品。それは何かの感情を表現しようとしているのではなく、数学的な計算から導き出されたような音楽。しかし各声部の絡み合い、主題が代わるがわる出てきて、さらに展開されたり逆行したり対称に動いたり、それらに集中して耳を傾けているうちに、瞑想的というか、独特の精神世界に迷い込んだようになります。
そしてそれが2声から6声に至るまでほぼ同時代同時期、同じ作者の弦楽器で統一された音色で演奏されているのを聴くと、自然と古のバッハの時代にタイムスリップしたような気持ちにもなりますね。
録音はバッハ・アーカイブで行われ、残響は少なめ、楽器の音色がそのまま伝わってくる録音。
最後にはコラール《我が悩みの極みにありて(汝の御座にわれいま来たりて)》BWV 668a 。フーガの技法の初版で、末尾に追加されていて、バッハの絶筆として伝えられてきた作品。盲目の状態でこの作品を弟子に口述筆記させたとのことですが、徹底的に対位法の技を突き詰めた数学的なフーガの技法とは対称的に、バッハの祈り、死を目前にして音楽を神に捧ようとする敬虔さ、そして精神の静けさが感じられます。そしてこの演奏の一番の特徴はコラールの旋律を奏でる音がゆっくりしたかなり深い振幅のトレモロをつけていること。ここまでワウワウ鳴る音色はあんまり聞いたことがないかな・・・・
このオルガンには2008年の修復時にTremulantという人工的に揺らぎを生じさせる機構を復元させたとのこと。バッハはこんな独特な音で奏したのでしょうか。興味深いですね。
ということで、ヴィオールとはまた違うバッハ時代のヴァイオリン属の音色、なかなか渋くてよかったです。そしてバッハ時代のオルガンで聴くバッハには新たな発見がいっぱいでありました。

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