クラシックとオーディオの日々

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ヴェネツィアの驚異、ガルッピのソナタと協奏曲集

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今晩は、バルダッサーレ・ガルッピのソナタと協奏曲集をアリアンナ・ラダエッリのチェンバロと指揮、アンサンブル・ラ・フィラレーテの演奏で「Wonder in Venice」(ヴェネツィアの驚異)と題されたアルバムを聴きます。5月23日リリースで、その週の新譜を聞き漏らしたので今聞いています。
ガルッピ(1706年–1785年)はイタリア・ヴェネツィア共和国でオペラと鍵盤楽曲で名声を博した作曲家。生まれ故郷のブラーノ島にちなんで「イル・ブラネッロ」という愛称。アントニオ・ロッティのもとで学んでヴィヴァルディらと活動し、ロンドンではヘンデルと並んで活躍、サンクトペテルブルクで宮廷楽長を務めたかた。オペラ100曲、400曲以上とも言われるチェンバロのためのソナタを書いています。バロックから古典派の橋渡しの作曲家ですね。
私がガルッピと出会ったのは、1965年に録音されたアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリのLP。ベートーヴェンの32番のソナタスカルラッティと共にガルッピのソナタが収録されていました。ガルッピの名前すら全く知らなかったのですが、ドソミソドソミソといったシンプルなアルベルティ・バスに乗っかって、本当に単純なメロディを弾いているのですが、その音の素晴らしいこと。録音は今聴くと古いのですが、それでもその磨き抜かれた透明な音色が、この単純な音楽を生き生きと蘇らせて、ベートーヴェンスカルラッティよりもこの曲にすっかり魅了されてしまいました・・・以来、ガルッピという作曲家の名前は私の脳裏に焼き付いています。
それでぼんやりとここ最近リリースされたアルバムをいろいろ眺めていたらガルッピだけのこの珍しいアルバムを発見。アルバムの表の写真がちょっとオペラっぽい衣装を纏っていたので、スルーしてしまっていたようです。
収録曲はソナタが5曲と協奏曲が2曲。ガルッピばかり70分。
早速聴きます。明るく倍音がたっぷり含まれたチェンバロの開放的な音。そして、ミケランジェリが弾いたソナタのように単純な左手の上に美しいメロディ。ああ、あのガルッピ。右手は華やかな装飾で軽々と弾かれていますが、その中にイタリア的なカンタービレが感じられます。音色はギャランティな感じで録音も素晴らしい。
アルカナ・レーベルですが、気がつくとこのレーベルのアルバムをたくさん聴いていました(最近ではヘンデルアレキサンダーの饗宴、ヘンデルのヴァイオリンソナタ、バッハの無伴奏チェロ組曲をヴァイオリンで演奏したもの、そして少し前には庄司 紗矢香とカシオーリのモーツァルトも良かった。)このアルバムも素晴らしく音がいい。自然な残響も美しいです。
チェンバロアンドレア・レステッリ製作(ミラノ、2021年)で、モクリスティアン・ファーター(ハノーファー、1738年)をモデルにしているとのこと。イタリア製だけど、元はドイツ系のチェンバロですね。非常に骨格が太く芯があり輝かしい音がします。
速い楽章はちょっとスカルラッティっぽい感じ。軽々とした音階や分散和音が楽しい。しかしガルッピの魅力はゆっくり目の楽章のカンタービレでしょう。オペラの作曲家でもあっただけにシンプルな伴奏形の上で、コロラトゥーラのように華やかな装飾が輝きます。
チェンバロを弾くアリアンナ・ラダエッリはイタリアの若手。ボローニャ国際チェンバロコンクールで優勝してシュトゥットガルト音大で古楽科の主任を務めておられます。録音はコレルリのヴァイオリン・ソナタトラヴェルソと演奏している素敵なアルバムがあります。
アンサンブル・ラ・フィラレーテの演奏者は弦楽器各パート1名ですが、コンチェルトは結構厚い音に聴こえます。
協奏曲ハ短調の第1楽章スピード感のある音楽。疾風怒濤、シュトゥルム・ウント・ドラングを絵に描いたような激しさ。ガルッピにもこんな劇的な面があるのは、やはりオペラ作家であったことの証左のように感じます。一転して優雅な第2楽章、ヴァイオリンとの対話とギャラントな装飾が美しい。カデンツァがありますが、これはラダエッリの即興かな。終楽章は長調で軽快。
最後のヘ長調の協奏曲は、前のコンチェルトとは対照的な穏やかでイタリアの陽光のような明るさがあります。その中でも短調の部分が挿入されたり、第2楽章も優雅で繊細で美しいのですが、装飾的でかなり技巧的に聴こえます。ここでもラダエッラのカデンツァが光ります。最後の楽章は最初からチェンバロが活躍する溌剌とした音楽。
久々にガルッピをまとめて聴きました。忘れられていた作品たちがまさにヴェネツィアの驚異として蘇った感じ。当時の華やかで煌めいていた音楽に驚きを持ちつつ感動しました。