クラシックとオーディオの日々

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バッハ対シャイベ炎上。

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今晩は、ベルリン・クラシックスから9月5日にリリースされた「バッハ対シャイベ」と題されたアルバムを聴きます。
 
以下、こちらのアルバムのプロモーション動画です

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これをみると、指揮者とソリスト含めみんな若いですね!エネルギーに満ち溢れ、表現したいという意欲が全面に出ています。ドイツ語を要約すると、フォルバースは「コンチェルト・ケルンは、忘れられた作曲家を再発見する“探検心”を今も持ち続ける理想的な古楽アンサンブルで、シャイベの批判を音楽的に再現してバッハとの論争を対話として浮かび上がらせるこのプログラムの挑戦を楽しんでいます」と述べています。ポラックは「バッハの独唱カンタータは純粋な宗教作品で、神への喜びがあふれています」と語ります。
 
さて、1737年5月14日付で発行された批評雑誌『Der critische Musikus』第6号に、「ドイツを旅する芸術愛好家からの公開書簡」という匿名記事が掲載されました。この記事は匿名の旅行者の手紙という体裁で、ドイツ各地の著名音楽家9人を論評しており、その中に「ライプツィヒのとある卓越した音楽家」が含まれていました。この中で「ライプツィヒの音楽家」のことを対位法的に高度な作曲様式を「混乱しており」「大げさすぎる」とし、作品の美しさが「過度の技巧」によって曇らされ、自然さが損なわれていると書いたのです。
 
この記事を書いたのが、ドイツの作曲家・評論家ヨハン・アドルフ・シャイベ(1708–1776)。そしてもうおわかりかと思いますが、この「ライプツィヒのとある卓越した音楽家」はヨハン・セバスチャン・バッハ。シャイベ28歳、バッハ51歳。
 
シャイベは「この偉大な人物(バッハ)は、もっと「愛らしさ」を備えていれば、そしてもったいぶって混乱したやり方で作品から自然な趣を奪い去ったり、その美点をあまりに過度の技巧で暗く覆い隠したりしなければ、きっと諸国民すべての驚嘆の的となっただろうに」と書き、まずバッハの鍵盤楽器(クラヴィーアやオルガン)の名人芸自体は高く評価しつつ、「技巧が凝りすぎて不自然だ」という趣旨の批判を展開します。彼はバッハの演奏技巧に「驚嘆すべき才能」と賛辞を送りながらも、「重労働にも等しい複雑さが盛り込まれており、その並外れた苦心も理性に反するため成果を生まない」などと述べ、音楽が「高尚なものから難解なものへと転落してしまっている」とまで書いています。
 
また、この批判記事ではバッハとは対照的に、当時流行していた「ギャラント様式」の作曲家たちが賞賛され、同時代の模範的な作曲家として、カール・ハインリヒ・グラウンやヨハン・アドルフ・ハッセ、ゲオルク・フィリップ・テレマンの名を挙げています。例えば彼は「テレマンの合理的な熱情のおかげで、フランス風序曲や合唱曲といった異国の音楽様式がドイツでも広く親しまれるようになり、フランス人でさえ彼に自国音楽の大いなる改良を負っている」と記し、テレマンらのもたらす簡潔で明瞭な新しい様式を高く評価しました。
 
この記事が、「炎上」します。バッハはこの記事に頭にきて、自ら直接筆を執る代わりに、親友でライプツィヒ大学の修辞学教授ヨハン・アブラハム・バーンバウムに反論を依頼しました。自分より筆の立つ人を選んだのですね。賢いかも。その反論文は「ある疑わしい書簡に関する公平な所見」と題され、1738年1月にライプツィヒで匿名出版されました。炎上開始。
 
バーンバウムは、シャイベの批判文を逐一検討し反駁する公開書簡の形式を取り、冒頭では「宮廷楽長たるバッハ氏は偉大な作曲家であり、音楽の大家であり、オルガンとクラヴィーアの名手で、その比類を見ない人物である…」と述べ、バッハがあらゆる点で無類の巨匠であることを強調しました。本文ではシャイベの主張一つ一つに対し、バッハ作品の構造的美点や表現意図を挙げた構成で、「はい論破」、したのです。高度な対位法や華麗な装飾音型といったバッハの作風は欠点ではなく、むしろ音楽芸術の正統な所産であると論じました。彼は修辞学の理論になぞらえて、バッハの作品に見られる複雑さや技巧は熟達した作曲技法の表れであり、「自然さ」と両立しうるものであると反証したのです。
 
1738年1月に刊行されるとバッハ自身がその冊子を多数入手し、友人知己に配布したと伝えられます。いわゆる拡散をさせたのですね。
 
この反論文は音楽家仲間の間で大きな反響を呼びバズりました。数ヵ月後には、ライプツィヒの若き音楽理論ローレンツ・クリストフ・ミズラーが自ら発行する定期刊行物にバーンバウムの反論全文を転載し、公開の場でバッハ支持を表明しています。バーンバウムの文章は当時の人文学者らにも評価され、その文体や論法の巧みさ(さすが修辞学教授であると)も賞賛されました。内容面でも、バッハの高度な音楽語法を知的に擁護したことで、逆に同業作曲家や愛好家たちにバッハ作品の価値を再認識させる契機となったのです。
 
一方、批判されたシャイベも黙ってはいませんでした。バーンバウムの反論に対し、彼は再び『Der critische Musikus』誌上の続報記事の中で、「バッハは様式の差異や品位というものを全くわかっておらず、時代の知的潮流にも疎いため、自分の言いたいことを代弁させるのにバーンバウムを雇わねばならないのだ」と痛烈に書き放ちました。挑発したんですね。このように論争は売り言葉に買い言葉の様相を呈し、しばらく紙上での論戦が続きました。
 
シャイベとバーンバウムの論争は、18世紀ドイツ音楽界における著名な論戦事件として当時大きな注目を集めました。シャイベの批判は匿名とはいえ誰のことか周知の事実だったため、楽壇では「天下のバッハに対する無礼な批評」と受け取られ、議論の的となりました。バッハの同時代人たちの多くは彼に同情的で、シャイベの辛辣な論調がかえって「バッハへの同情と支持を喚起した」とも伝えられるとか。
 
数年にわたり続いた筆論も、1740年代には次第に下火となり、シャイベ自身、論争から年月を経て態度を軟化。最終的には1745年、シャイベは自身が刊行した評論集において、バッハの「イタリア協奏曲」(BWV971)への賞賛レビューを掲載し、その序文で「私はこの偉大な人(バッハ)に対してある種の不当を働いてしまっていた」という言葉を残し、自らの過去の批判が行き過ぎであったことを認めたのです。事実上の謝罪ですね。
 
こうして7年間にわたる論争に終止符が打たれました。このことによって逆にバッハという作曲家がクローズアップされ、そして現代にまで繋がるバッハ伝説になっていったのは皮肉ではありますが、シャイベの逆の意味での業績と言ってよいかも。しかし現代からみると、シャイベの書いていることは、当時の音楽的な趣味の変容を敏感に捕らえて正直に書いたものなので、決してシャイベがバッハに対して悪意を持って書いたのではないと思います。時代はギャラントな方向に向かい、確かにバッハは時代遅れとなっていたのです。
バッハ・シャイベの論争は知っていたけれど、詳しく調べると現代のSNSの炎上にも似ていて興味深いですね。
 
さて、メチャクチャながーい前置きになりました。このアルバムでは、このバッハとシャイベの論争を踏まえて、ふたりの作品が交互に取り上げられています。
プログラムは以下の通り。
 
バッハ:「諸国民よ神をたたえよ」BWV 51:第1部 アリア 「諸国民よ神をたたえよ」
シャイベ:「誇りを持ちたい者は」SchW B2:204:第5部 アリア 「高貴な純真よ、理由を示せ」
バッハ:「協奏曲」BWV 981(B.・マルチェッロ作曲のホ短調協奏曲による編曲):第1楽章 アダージョ
バッハ:「わが嘆きは多かった」BWV 21:第1部 シンフォニア
シャイベ:「ミカエル祭の協奏曲(主の天使が宿営する)」SchW B2:205:第3部 アリア 「風のごとく非常に速く」
バッハ:「速く、渦巻く風たちよ」BWV 201:第3部 アリア 「風よ、それが風のすること」
シャイベ:「栄光の神殿、ニ長調シンフォニア
 第1楽章 アレグロ・アッサイ
 第2楽章 ラルゲット
 第3楽章 プレスト
バッハ:「天の君、ようこそ」BWV 182:第1部 ソナタ
シャイベ:「死にゆくイエスよりのシンフォニア」SchW B2:302
バッハ:「主の御国で神をほめよ」BWV 11:第10部 アリア 「イエスよ、あなたの慈しみのまなざし」
シャイベ:「イエスの復活と昇天」SchW B2:301:第13部 アリア 「ようこそ、救い主」
バッハ:「甘美なる慰め、我がイエス来たる」BWV 151:第1部 アリア 「甘美なる慰め、我がイエス来たる」
バッハ:シンフォニア ニ長調 BWV 1045
 
演奏者
マリー=ソフィー・ポラーク(ソプラノ)
マックス・フォルバース (指揮)

 

 
マリー=ソフィー・ポラックは、ドイツ出身のソプラノ歌手。ミュンヘン音楽演劇大学を最優秀で卒業、学生時代にテレマン《ピンピノーネ》ヴェスペッタ役でインスブルック古楽音楽祭にデビューし、スカルラッティ《ラ・ディリンダーナ》主演やバッハ《ロ短調ミサ曲》などで注目を集めました。以後、ハンブルク州立フィル、フライブルクバロック、アカデミー・フュル・アルテ・ムジーク・ベルリン、レ・ヴィオロン・デュ・ロワなど著名オーケストラと共演し、ケント・ナガノノリントンボルトンら一流指揮者と共演。ハンブルク・バレエでははノイマイヤー演出のグルック《オルフェ》やバッハ作品に出演しているとのこと。
 
マックス・フォルバースは、ドイツのリコーダー奏者、チェンバロ奏者、アンサンブル指揮者。ザルツブルク・モーツァルテウム大学でヴァルター・ファン・ハウヴェ、ラインハルト・ゲーベルらに師事。2021年、リコーダー奏者として史上初めてドイツ音楽コンクール優勝を果たし注目を集めます。2023年、デビューCD『Whispers of Tradition』でオーパス・クラシック新人賞と《ヴェルト・アム・ゾンターク》観客賞を受賞。コンチェルト・ケルン、イル・ポモ・ドーロ、ラ・チェトラ、コンチェントゥス・ムジクス・ウィーンなど欧州主要バロック楽団と共演していますね。2024年にはベルリン・クラシックスと契約し、アルバムもリリースしています。
 
コンチェルト・ケルン(Concerto Köln)は、1985年にドイツ・ケルンで結成された世界的な古楽オーケストラ。指揮者を置かない自主運営型の合奏団として知られ、バロックから古典派初期のレパートリーを歴史的奏法と当時の楽器で演奏しています。録音も数多くリリース。ヘンデル、ヴィヴァルディ、モーツァルトなどの名曲はもちろん、埋もれた作曲家やオペラ作品の発掘にも積極的で、リッカルド・ミナーシ、イル・ポモ・ドーロの音楽家らとも協働していますね。
 
早速1曲ずつ聴いてみましょう。
 
バッハ:諸国民よ神をたたえよ」BWV 51:第1部 アリア 「諸国民よ神をたたえよ」
輝かしいソプラノとトランペットの掛け合いで有名なカンタータ冒頭。バッハの声楽作品中でも最も祝祭的です。ティンパニも入り、ポラックの細かい声の技巧が際立ちます。ケルン・コンチェルトも華やか。バッハの作品の中でも非常に外面的で効果的なオーケストレーションです。冒頭を飾るに相応しい曲。
 
シャイベ:「誇りを持ちたい者は」SchW B2:204:第5部 アリア 「高貴な純真よ、理由を示せ」
ミカエル祭のカンタータから抜粋。弦楽器の前奏の後、フラウト・トラヴェルソのデュオが柔らかな響きを奏でます。透明感ある旋律線と素朴な和声感が特徴。バッハ的な複雑さはなく、短いフレーズごとに区切るのが特徴。分かりやすく明快な音楽ですね。1曲目のバッハの後にはホッとさせる柔らかさと、語るような歌がいいです。決して悪くなく、魅力的な歌。世界初録音のようです。
 
バッハ《協奏曲 BWV 981(マルチェッロの協奏曲による編曲)》第1楽章
これはチェンバロ独奏。若き日のバッハがイタリア音楽に学んだ証。ヴィヴァルディ風の様式を取り入れた編曲で、チェンバロ独奏が清新な魅力を放ちます。このチェンバロはフォルバースかな。渋い音色で少し憂いを感じさせます。
 
バッハ:「わが嘆きは多かった」BWV 21:第1部 シンフォニア
初期の大規模カンタータ管弦楽の悲しみを帯びた序奏、柔らかなオーボエの音色が実に美しい。ここではバッハは悩み多い人間の苦しみを表現しているかのよう。こうやって改めて聴くと、バッハのメロディは実に魅力的。シャイベはこのようなバッハの一面をあまり知らなかったのかも。
 
シャイベ:「ミカエル祭の協奏曲(主の天使が宿営する)」SchW B2:205:第3部 アリア 「風のごとく非常に速く」
明るくのびのびとしたオーケストラの前奏の後詩編34篇「主の使いは宿営を張る」に基づくアリアが歌われます。天使ミカエルの守護を描き、快速の伴奏にのせて光輝と防御のイメージを展開しています。やはり明快で、前曲と同様一つのフレーズが短く区切られていきます。バッハの連綿と続くフレーズとは違いますが、とても親しみやすいですね。
 
バッハ:「速く、渦巻く風たちよ」BWV 201:第3部 アリア 「風よ、それが風のすること」
世俗カンタータ、通称「争論カンタータ」から。風や嵐を模倣する急速な楽句が印象的。バッハが批評家に皮肉を込めて書いたとも言われる作品とのこと。作曲されたのはシャイべの記事の前ですから、バッハは他の批評家からも結構古臭いって言われてたのかも。
 
シャイベ:《栄光の神殿》よりシンフォニア ニ長調
三楽章からなる器楽曲。華やかな序奏、しなやかな緩徐楽章、疾走する終曲という典型的なシンフォニア形式。これも世界初録音。これはもう前古典派の雰囲気。1楽章はトランペットとティンパニが華やかに鳴らす中、途中フルートの柔らかなパッセージが入って、変化がある楽しい作品。2楽章はラルゲットながら柔らかく細かいパッセージが散りばめられた愛すべき曲。3楽章はプレストで突っ走ります。賑やかなラッパとティンパニが盛り上げるハデなシンフォニアです。交響曲の歴史の中の最初期の作品ですね。劇音楽的性格が強く、結構聞かせてくれます。シャイベ、やるじゃない。
 
バッハ:「天の君、ようこそ」BWV 182:第1部 ソナタ
棕櫚の主日用の初期カンタータ。牧歌的な響きが美しい曲で、私はこの曲が大好き。リコーダーとヴァイオリンのソロがオルガンの通奏低音の上で穏やかな対話を広げます。リコーダーはもしかしたら指揮者でリコーダーの名手フォルバースかも。時に軽く装飾を入れていいですね。穏やかな気持ちになります。
 
シャイベ:「死にゆくイエスよりのシンフォニア」SchW B2:302
この作品はぐっと重みを増して、受難を描いた作品のようです。穏やかでありながらも内省的な弦楽器による楽導入部で、神秘的な響きが支配した後、ピチカートに乗ってフラウト・トラヴェルソが2本で柔らかい響きを奏でます。ちょっとした2本のフルート協奏曲の緩徐楽章のようですね。弦楽器の受難の歩みと、愛に溢れたトラヴェルソの対比が実にいい。これも世界初録音のようです。
 
バッハ:「主の御国で神をほめよ」BWV 11:第10部 アリア 「イエスよ、あなたの慈しみのまなざし」
これはバッハの後期の大作「昇天オラトリオ」から、イエスの恵みの眼差しを賛美する甘美なアリア。ここでも弦楽器の少し重めの音色の上をトラヴェルソオーボエが柔らかい響きを奏でます。アリアはポラックの声がとてもいい。「イエスよ、あなたの恵みの眼差しをかわることなく見ることができます」と歌いますが、これは前曲と繋がっているような配置。こうやって聴くと、決してバッハ対シャイべという単純な配置ではなく、一つのプログラムとして緩急交え、ストーリー的にも考えられているようです。

 

シャイベ:「イエスの復活と昇天」SchW B2:301:第13部 アリア 「ようこそ、救い主」
こちらはシャイべの復活オラトリオから、イエスを迎える喜びに満ちた旋律。実に明快でさわやかな弦楽器による明るい前奏の後、軽やかなポラックによるアリアが歌われます。このあたりはバッハにはないシャイベの明快さが生きています。中間はゆっくりとなり伴奏の劇的センスが光りますね。ダ・カーポで冒頭の明るい雰囲気に戻り、楽しげに終わります。世界初録音。
 
バッハ:「甘美なる慰め、我がイエス来たる」BWV 151:第1部 アリア
クリスマスのためのカンタータトラヴェルソオーボエ・ダモーレとソプラノの柔らかな絡み合いが絶品の作品。穏やかなポラックの声でイエスが今生まれたことの喜びを歌い上げます。バッハのメロディメーカー躍如の作品。優しさの中に深みがありますね。中間部はポラックの技巧的な歌とトラヴェルソの掛け合いが見事。うまいな、このトラヴェルソ奏者。これもダ・カーポアリアで美しく冒頭を繰り返します。
 
最後はバッハ:シンフォニア ニ長調 BWV 1045。あれ、この曲知らない作品。こんな劇的なシンフォニアあったんだ。冒頭に序奏があったらしいけど失われていて、カンタータの冒頭シンフォニアとして書かれたとのこと。トランペットとティンパニがここでも輝かしく響き、ヴァイオリンはコンチェルトのよう技巧的なアルペジオ、そしてオーボエとの対話を繰り広げます。トランペットがここでも大活躍。コンチェルト・ケルンの演奏は実に活き活きとして楽しい演奏ですね。最後、華やかに終わると思いきや、一瞬短調の和音が挟まりヴァイオリンが即興的に暗いパッセージを弾いた後、このアルバムを締め括りに相応しい盛り上がりで曲を終えます。
 
さて、今晩も長くなりました。けれどバッハvsシャイべの論争は調べてみるとなかなか興味深いものでした。これは現代の論争にも繋がりそう。例えば「高度な芸術性」対「大衆的なわかりやすさ」、どちらが上なのか。永遠に繰り返されるテーマなのかも。
 
ただ、このアルバムは決してバッハとシャイべを比べて音楽の優劣を示すのではなく、まずは祝祭的なバッハから始まり、シンプルなシャイべで音楽を対比させ、自然と超越という共通のテーマが歌われ、シャイべの珍しいけれど充実した3楽章のシンフォニアで彼の実力を聴かせ、最後は復活・慰め、そして栄光で終わるというストーリー。一つのプログラムの流れとして非常によく考えられています。
 
シャイべの音楽は確かにバッハとは違い、より新しい時代に変わってきていることを感じさせます。それは意外なほど魅力的。バッハは確かに対位法による深みもあるけれど、ここに集められたバッハの作品はどちらかというと明快なもの。シャイべと並べても違和感のない音楽が集められていますね。
 
演奏はポラックはバッハなどバロックによくあった声ですが、癖のある古楽唱法ではなくてとてもナチュラルに表現していて好き。そしてコンチェルト・ケルンは実に活き活きとした運動性を感じさせる演奏。録音もとてもいいですね。ハイレゾ配信でないのがちょっと残念。
 
ということで、歴史上の興味深い議論の炎上に思いを馳せつつ、当時の音楽が同時に楽しめる、極上のアルバムでありました。
 
 

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